相続に関する民法の規定が大きく変わります。
3月に国会に提出されて施行は来年の予定ですが、影響が大きいので主な内容を早めにご紹介します。
1.遺留分
<現行>
・遺留分(遺言がある場合でも最低限保証される取り分。法定相続分の半分)を請求されると全ての財産が共有になり、分割が滞ってしまう。
<改正案>
・現実的には現預金での分割を要求するケースが多いので、分割払いを含めて現預金で解決できるようにする。
2.預金の取扱い
<現行>
・相続人の合意があれば未分割でも預金の一部引き出しはできるものの銀行もあとでトラブルに巻き込まれなくないので応じないケースがある。
<改正案>
・一部分割を明文化して葬式代などをすぐに払えるようにする。
・仮払い制度の新設。条件を満たせば相続人の合意がなくても「預金の1/3×法定相続分」までを引き出せる。
3.自筆証書遺言の見直し
<現行>
・全て自筆、書き方のルールも複雑で無効になるものも多い。
・公正証書遺言と異なり、紛失のリスクがある。
・相続後に裁判所の確認である「検認」が必要。
<改正案>
・財産目録についてはパソコンでの作成も認めるので内容の見直しがしやすくなる。ただし本文は自筆のまま。
・法務局で保管する制度を新設し、申請時に書式のチェックもしてくれる。検認も不要に。
4.配偶者の居住権
<現行>
・配偶者が住む自宅であっても他の財産と同列なので分割のために売る羽目になり、高齢にも関わらず住処を失うこともある。
<改正案>
・配偶者が自宅に無償で住み続けられる居住権を新設。婚姻期間20年以上の夫婦間で自宅を生前贈与した場合、その分を除いて遺産分割を計算する。
5.寄与分
<現行>
・介護などで特別に貢献度が高くても遺産分割での考慮は極めて少ない。
・息子の嫁に至っては相続分がそもそもないため、何もない。
<改正案>
・介護などで特別に貢献していた場合、その分を金銭で請求できるようにする。
・相続人でない2親等内の親族に寄与分の請求を認める。
今の規定は約40年前に定められたものであるため、時代の要請と合わない部分があります。改正でそういった部分が大幅に変わります。
現行でも公正証書遺言や信託などで対応可能なものもありますが、現実に即した使いやすい制度になります。
特に遺言の作成をお考えの場合は来年以降の方向性も考慮しつつ、検討されることをお薦めします。