2回連続で相続税の増税を取り上げましたが、減税になるものもあります。
その1つが事業承継税制の拡充。
事業承継税制とは中小企業が円滑に事業承継できるように株引継ぎ時の税負担を抑える制度ですが、使いにくさから今一つ普及が進んでいませんでした。
改正でその要因が改善されています。
<改善点>
① 納税猶予されるのが80%まで ⇒100%猶予
② 代表者以外からの株は通常の課税⇒事業承継税制の対象
③ 一人で承継するケースのみ対象 ⇒複数の後継者もOK
④ 雇用維持8割がプレッシャー ⇒理由があればOK
⑤ 株を売却等すれば相続税納付 ⇒経営悪化による場合など条件付きで免除
<解説>
① 100%猶予
従来は20%部分には相続税がかかっていましたが、これがなくなり100%が納税猶予の対象となります。
ただし特例承継計画を平成30年4月1日~平成35年3月31日の間に認定経営革新等支援機関の指導を受けて作成し、都道府県に提出する必要があります。
② 代表者以外の株もOK
③ 複数後継者もOK
従来は前代表一人から現代表一人のケースしか想定していませんでしたが、実際には株が親族に分散していることもありますし、兄弟で事業を承継するケースもあることから範囲が拡大されます。
④ 雇用維持の緩和
従来は雇用の8割を維持できなければ猶予された相続税を全額払う必要がありました。
業績の先行きが読めないことや採用したくてもできない状況を踏まえて、雇用維持できない理由(経営悪化など正当なもの)を記載した書類を都道府県に提出すれば猶予は継続されることとなりました。
⑤ 売却時の免除
従来は5年経過後に株の売却、合併、後継者が経営を継続しないといったことがあった場合は猶予された相続税を払う必要がありました。
改正で経営悪化等を理由に売却等した場合にはその対価(売却時の相続税評価額の50%下限)は払う必要がありますが、差額については免除されます。
また50%以下になる場合も引き継ぐ会社が2年後に半数以上を雇用している場合はその時点で免除されます。
<期間限定>
今回の拡充は平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間の相続贈与について適用されます。
10年の期間限定にしているのは中小企業経営者が高齢化し、今承継しておかないと廃業が増えてしまうという差し迫った課題であるためです。
従来の制度よりかなり使いやすくなるので今まで二の足を踏んでいた会社でも検討する価値はあります。