使用貸借と贈与税

posted by 2024.07.23

car_parking_p

 使用貸借とは有償で貸し借りをする賃貸借とは異なり、タダで貸し借りをすることを言います。

 他人間で土地や建物をタダで貸すことは普通ないですが、身内の間ではよくあります。
例えば、親の土地の上に子どもが自宅を建てるようなケースです。
固定資産税ぐらいは負担することはありますが、これも「タダ同然」と取り扱われます。

 

 相続税基本通達9-10には次のような記載があります。

「夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で(中略)無償又は無利子で土地、家屋、金銭等の貸与があった場合には、相続税法第9条(みなし贈与)に規定する利益を受けた場合に該当するものとして取り扱うものとする。」

 つまり利益相当分、土地であれば地代分の利益を受けたことになり贈与税が課税されるという内容です。
ただし、身内でタダで貸し借りすることはよくありますので、続いてこう記載があります。

「ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする。」

 つまり変に節税になっていなければ特に贈与税は課税しません、ということになっています。

 

 ここまでは自宅をイメージしていましたが、これが収益を生む土地だったらどうなるでしょうか。
親の土地の上に子どもがマンションを建てて家賃収入を得ていて、それが使用貸借なら地代を払わなくていい分、利益が増えます。
もっと簡単な例で駐車場だったらどうなるでしょうか。

 

<事例>
・元々は父が駐車場経営をしていた
・税理士に使用貸借による節税策を勧められる
・子どもと土地の使用貸借契約を締結し、アスファルト設備を贈与
・駐車場収入の振込先は当然子ども

<裁判所や不服審判所の判断>
・土地の所有者が駐車場代を受け取る権利は、使用貸借のような弱い権利では移らない
・所得税や相続税の節税目的ありき
・振込先を変えただけで子どもは何の努力もしていない。管理も第3者が継続

 

 収益を生む使用貸借が全部ダメという話ではなく、安易過ぎる場合は否認される可能性がある、という事例です。
例えば、土地を使用貸借で借りていても、子どもが借金をしてマンションを建てて管理も自分でしていれば贈与を認定されることはなさそうです。

 

 この件に限らず簡単かつ節税になる方法は「そんなうまい話あるかな?」と立ち止まって考えてみましょう。