ネットニュースを見ていたら「税務署と闘って芸人であることを認めさせた」という記事が流れてきて、面白かったので解説します。
<記事の要約>
・税務調査が入って、芸人としての経費を認めないと指摘された
・収入は水道検針員のバイトが年200万円、芸人が年2万円で「趣味でお笑いをやっている水道検針員」という判断
・ライブでの一生懸命さが伝わって経費が認められた=芸人と認められた
税金的にはどういう話かというと「損益通算」と「副業の300万円問題」が関係してきます。
「損益通算」は黒字と赤字を相殺して所得税を計算するもので、相殺できるのは不事山譲(”富士山上”=不動産・事業・山林・総合譲渡)の赤字です。
この中に雑所得は含まれていないので、副業で赤字が出ても給与など他の所得の黒字とは相殺できません。
「副業の300万円問題」は一定規模に満たない事業(農業含む)や不動産業は雑所得扱いになり損益通算できなくなる、というものです。
”一定規模”に関する基準は次の通りです。
① 記帳・帳簿書類の保存なし
・年収300万円以下⇒雑所得
・年収300万円超 ⇒概ね雑所得(内容によっては事業所得)
② 記帳・帳簿書類の保存あり
・原則:年収に関係なく概ね事業所得
・例外:次の形式基準に引っ掛かると雑所得
★ 収入金額が僅少(概ね3年程度の期間で見て、年収300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満)
★ 営利性が認められない(万年赤字で、赤字解消のための取組みを実施していない)
今回の例は芸人としての収入は規模的には厳しいものの、帳簿書類の保存がしっかりあって、かつ赤字解消のための取組み(ウケなくても必死にやっている姿)が認められたようです。
結論としては、赤字解消のための取組みという曖昧なものは立証が大変なので、まずは形式基準であるメイン収入の10%以上を意識するようにしましょう、ということです。