免税事業者のインボイス対応

posted by 2023.01.18

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 前回の続きで現状で免税事業者である場合のインボイス制度への対応を確認していきます。

 

1.課税か免税かの選択

 登録せずに免税事業者を継続する場合、取引先の側では支払う消費税が増えるため、取引の見直しや値引きを要求される可能性があります。
下請法等で守られるものの暗に圧力を掛けてくることもありますし、売上がなくなってしまっては元も子もありません。

 一方登録して課税事業者になると、申告などの事務負担が増え、税理士等に新たに依頼する場合は費用負担が発生し、消費税の税負担により手取り額は減ります。
下記で見ていく経過措置も利用しながら登録によるデメリットの軽減を検討していくことになります。

 

2.登録しない場合

① 買い手側の経過措置

 免税事業者から購入した場合、買い手側で消費税の控除ができなくなりますが、いきなり全額不可ではなく6年間は部分的に控除できます。
令和5年10月1日からの3年間は8割、次の3年間は5割は控除できます。

 

② 価格交渉

 ①の経過措置により、消費税の10%分そのまま値引き要求される言われはありません。
ただし買い手側で負担の増える2割ないし5割の値引き交渉はあるかも知れません。

 

3.登録する場合

① 登録申請

「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に紙又は電子で提出します。
期限は9月30日に延びましたが、登録までの時間を考えて、遅くても7月末までには申請するようにしましょう。

 

② システムの準備

 請求書や領収書にインボイス登録番号と消費税率ごとの集計ができるよう設定を変更する必要があります。
手書きの領収書の場合、その都度14文字書くのは大変なのでスタンプなどを作った方がいいかも知れません。

 

③ 売り手側の経過措置

 受け取った消費税の2割を納税額とする3年間の経過措置が導入されます。

・対象:免税事業者からインボイス登録事業者になった場合

・期間:令和5年10月1日~令和8年9月30日を含む期間

・手続:届出不要。申告時に判断可能

 

④ 簡易課税選択

 事務負担及び税負担を減らす上で簡易課税制度の選択も検討材料となります。
簡易課税の場合、仕入や経費の消費税を集計する必要がなく、売上だけから消費税を計算できます。

・対象:基準期間(2年前)の課税売上高が5000万円以下

・期間:特に期間の限定はなし

・手続:原則は前期末までに届出提出。例外として新たにインボイス登録した場合、最初の課税期間の末日(申告期限ではなく決算期末)までの提出が可能

 原則課税との比較、③の経過措置との有利不利を比較をしながら簡易課税を選択するかどうかを検討することになります。

 簡易課税は業種により控除率が決まっています(例:卸売9割、小売8割、製造等7割、飲食6割、サービス5割、不動産賃貸4割など)。
③の経過措置は一律8割なので卸売業では簡易課税が有利になります。

 卸売業以外では、③の経過措置を3年間使ってその後簡易課税へ移行するケースが多くなりそうなので、その想定で値付けや資金繰りを考えていくことになります。