副業の300万円問題 ②

posted by 2022.10.12

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 昨日の続きで副業が雑所得に該当するかどうかという通達改正について見ていきます。

 営利を目的として継続的に行う資産(暗号資産や外貨など)の譲渡から生ずる所得は事業所得又は雑所得に該当します。

 

 事業か雑かの区分に関しては昭和48年の判例があります。

「営利性・有償性の有無、継続税・反復性の有無、自己の危険と計算における企画遂行性の有無、その取引に費した精神的あるいは肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無、その取引の目的、その者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を検討し、一般社会通念によって決める」

 理屈は分かりますが、検討することが多すぎて納税者も税務署も実質基準での判断は困難です。
そこで形式基準を作ることになり、年収300万円以下なら雑所得という案が出てきましたが反対意見が多く撤回。
最終的には記帳や帳簿書類の保存により区分することとされました。
事業所得では記帳や帳簿書類の保存が義務付けられているので、それがないということは事業には区分されないという理屈です。

 

1.記帳・帳簿書類の保存なし

・年収300万円以下⇒雑所得

・年収300万円超 ⇒概ね雑所得

 記帳・帳簿書類の保存がなく300万円以下なら自動的に雑所得になりますが、300万円超の場合は判例のような事実があれば事業所得になることもあります。

 

2.記帳・帳簿書類の保存あり

・年収に関係なく、概ね事業所得

 記帳・帳簿書類の保存があれば原則的には事業所得になりますが、次のような場合は雑所得になることもあります。

〇収入金額が僅少(例年※ 300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満)

※例年:概ね3年程度の期間

〇営利性が認められない(例年赤字で、赤字解消のための取組※を実施していない)

※赤字解消のための取組:収入を増加させる、あるいは黒字にするための営業活動

 

 300万円という形式基準は撤廃されたものの、収入が少ない場合や節税のための万年赤字を牽制する内容は残りました。

 副業収入が本業の10%以上という基準が微妙なケースもありそうですが、その場合は記帳や帳簿書類の保存をしっかりと行い、黒字にするための営業努力を説明できるようにしておく必要がありそうです。