債権放棄と税金の3回目は相続税や贈与税との関係について見ていきます。
中小企業においては会社と個人が一体的に運営されているため、会社で資金不足が生じた場合、それを助けるために役員が資金を貸し付けることがよくあります。
役員にとってこの”貸付金”は財産であり、相続税の対象となります。
いつ返してもらえるか分からない貸付金に相続税を払うのはもったいないと考え、債権放棄をすることがあります。
この場合、債権放棄してもらった会社では、借入金が消えるので「雑収入」が発生し、法人税が課税されます。
なお、業績不振で赤字だったり、繰越欠損金がある場合は、雑収入として課税されても赤字が減るだけで法人税がかからないことになります。
貸した役員の相続税が減って、借りた会社の法人税の課税もなければ言うことなしかと思いきや贈与税の課税リスクがあります。
どういうことかと言うと債権放棄をしてもらった会社が利益を受けるということは間接的に会社の株主も利益を受けることになります。
株主にとっては、会社が債権放棄をしてもらうことで利益が出て、株の価値が向上することになり、債権放棄した役員から間接的に株主への贈与があったことになります。
この”みなし贈与”のリスクは状況によって変わります。
<贈与税リスク低い>
・株価がマイナスで、債権放棄を受けても株価がプラスにならず、利益が発生しない。
・株主にとっては理論上の利益であって、お金が入ってくるわけでもなく担税力がない。
<贈与税リスク高い>
・債権放棄が多額で株価への影響が無視できない。
・債権放棄する役員が高齢で、相続直前の放棄である場合、意思能力や経済的合理性の面から追及される。
債権放棄をする場合は、本人の意思を確認する意味でも書類をきっちりと作り、株価への影響もあらかじめ試算しておくのがベターです。