前回、全額損金の保険は”課税の繰り延べ”であって”節税”にはならない、という内容を取り上げましたが、節税の方法がないわけではありません。
次のような観点で所得税や相続税を節税することは可能です。
1.受取時の税率を下げる
2.元手を移転する
3.評価を圧縮する
1.受取時の税率を下げる
<概要>
会社から給料をもらえば給与所得、配当をもらえば配当所得として所得税がかかります。
いずれも所得が増えるほど税率が上がる超過累進税率であるため、住民税と合わせて55%の最高税率もあり得ます。
これを退職金という形で受け取ることで所得税の軽減措置を受けることができて税率は半分以下に下がります。
法人で役員を被保険者にして定期保険等に加入して、解約時に役員退職金として払い出すのはこのパターンです。
そのため、保険加入時に退職金を出すタイミングをある程度想定しておいて、解約返礼率が高い時期と合わせる必要があります。
なお役員を被保険者をする場合、必ずしも退職する本人である必要はありません。
年齢の若い人で加入する方が保険料は安いので、退職する本人ではなく、後継者が被保険者となって加入するケースが多いです。
<軽減内容>
① 退職所得控除
勤続期間によって控除額が決まっていて、1年あたり40万円、20年超は1年当たり70万円です。
例えば勤続30年であれば「40万円✕20年+70万円✕10年=1500万円」となります。
② 1/2課税
退職金への税金の計算式は次にようになっています。
<所得税> (退職金-退職所得控除)✕1/2✕所得税率(5~45%)
<住民税> (退職金-退職所得控除)✕1/2✕住民税率(10%)
所得税も住民税も税金をかける前に1/2を掛けているので税率は最高でも27.5%までです。
なお勤続期間が5年以下の役員にはこの1/2の規定はありません。
③ 分離課税
退職金は給料や年金など他の所得とは別に税金を計算します。
所得税は所得が高いほど税率が加速度的に上がる累進課税制度をとっていますので分離すると低い税率が使えます。
元手の移転と評価の圧縮については次回へ続きます。