相続法改正の5つ目は遺留分減殺請求に関する改正です。
Ⅴ 遺留分減殺請求権の金銭債権化(2019.7.1~)
① 目的
遺留分とは相続人に保証された最低限の取り分のことを言います。
通常は相続分の半分で、妻と子2人の場合の子の遺留分は1/4✕1/2=1/8になります。
「全財産を妻に相続させる」という遺言があっても、子Aは1/8の遺留分を請求することができます。
ただし遺留分減殺請求は原則、相続した財産そのものが対象なので財産のほとんどが不動産である場合などは分けづらく、手続きに時間がかかっていました。
そこで「モノ」ではなく、「お金」で請求できるように改正されます。
② 内容
<改正前>
・原則は現物での請求、例外として金銭。
・名称「遺留分減殺請求」
・遺留分の計算に含める生前贈与は過去全てが対象。
<改正後>
・原則お金(債権)での請求。
・名称「遺留分侵害額請求」
・遺留分の計算に含める生前贈与は過去10年以内まで。
遺留分の請求がお金でできるようになったことに加え、遺留分の計算に含める過去の生前贈与も10年以内とされました。
これはあまりに古い贈与に関しては、知ること自体が難しいため、法的安定性に欠けるという声があったことへの対応です。
ただし、被相続人と受贈者が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与した場合には、10年以上前の贈与であっても遺留分算定の基礎となる財産に含まれるという点は現行法と変わりありません。
請求の対象物は変わったものの、遺留分を害さないような遺言内容にすることや特別受益(生前贈与や結婚資金の負担など)を明らかにしておくことは改正前と変わらず重要と言えます。
③ 税金(改正前後で変わらず)
遺留分侵害額請求に基づいて、相続人の財産が変動した場合には、裁判等で確定した日の翌日から4ヶ月以内に、増えた人は「修正申告」で追加納税をし、減った人は「更正の請求」で還付請求します。