昨日の続きで退職金の分割支給に関する裁判内容を見ていきます。
<退職の状況>
・代表取締役⇒非常勤取締役(分掌変更)
・退職金は2億5000万円。
・資金繰りの都合で3年以内に分割支給する旨を取締役会で決議。
・分掌変更年度と翌事業年度に1億2500万円ずつ支給し、それぞれの年度で損金経理(経費化)。
<国側の主張>
・翌事業年度分は経費として認められない。
・通常の退職であれば支払った年度に損金経理すれば分割で経費にできるが、分掌変更の場合は利益調整の余地があるので払い切らないといけない。
<納税者の主張>
・法人税基本通達9-2-28にあるように分割払いの場合は支払った事業年度で損金経理すればそれぞれ支払った年度で経費にできるし、分掌変更であっても同様。
<裁判所の判断>
・分掌変更であっても退職には変わりないので通達9-2-28の適用はある。
・いつの経費になるかは一般に公正妥当な会計基準によるべき。分割払いはよくあることだし、多くの税理士等が紹介している。
<注意点>
・分掌変更は一括払いしか経費にできない、というのが通説だったので判決は画期的。
・ただし何でもありではない。利益調整ではなく資金繰り等の面から経営判断により分割支給している旨をアピールしたいところ。
・総額が最初に確定しているのは当然として、いつまでの分割かいう”終期”を明確にしておく。ある時払いでは利益調整と言われてしまう。
スムーズに事業承継を行なうためには退職しても何らかの形で会社に残って後継者を指導するというのはよくある話ですし、分割支給や分割経理についても資金繰りや決算書への影響を考えると経営判断としてはあり得る話です。
利益調整ではなく経営合理性があることをはっきりさせておくことが分割で経費にするためには重要になってきます。