生産性革命の続きで賃上げのための所得拡大促進税制について見ていきます。
ガラッと変わるので大綱では”改正”と言わず”改組”と表現しています。
<方向性>
・お金を社内に貯め込まず給料として出すよう税額控除の率を上げる。
・大企業と中小企業でメリハリをつけて中小企業により手厚くする。
・従来の3要件のうち2つをなくす(単価アップだけ残す)。
・大企業は人件費だけでなく設備投資を増やすことも要件に追加。
・生産性向上につながる教育訓練費を増やした場合には控除率を上乗せ。
<大企業>
① 従来の要件
・平成24年度より給与総額が5%以上増加。
・給与総額が前年より増加。
・平均給与が前年平均より増加(単価下げて人だけ増やさないように)。
② 改正後の要件
・平均給与※が前年平均より3%以上増加(従来は1円でも上がればOK)。
・国内設備投資が減価償却費総額の90%以上。
・設立事業年度は対象外(従来は無条件で使えた)。
※平均給与は2年間ずっと在籍している人で計算(従来は1ヶ月ずつでもOK)。
③ 税額控除率
・給与総額の増加額×15%(法人税額の2割が上限)
・教育訓練費が過去2年平均より2割以上増えれば税額控除の率を15%⇒20%へアップ。
<中小企業>
① 従来の要件
・平成24年度より給与総額が3%以上増加。
・給与総額が前年より増加。
・平均給与が前年より増加(単価下げて人だけ増やさないように)。
② 改正後の要件
・平均給与が前年平均より1.5%以上増加(従来は1円でも上がればOK)。
③ 税額控除率
・給与総額の増加額×15%(法人税額の2割が上限)
・教育訓練費が前年比1割以上増加または経営力向上計画の実践が証明された場合は税額控除の率を15%⇒25%へアップ。
<適用期間>
・平成30年4月1日~平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度。
<ペナルティ>
儲かっているのに給与も上げず設備投資もしない大企業にはペナルティが課されます。
① 対象となる大企業
・前年より所得が増加。
・平均給与が前年平均以下。
・国内設備投資が減価償却費総額の10%以下。
② ペナルティの内容
・試験研究費の税額控除、地域未来投資促進税制、IoT投資税制が使えない。
従来から税理士泣かせの複雑な制度ですが、生産性向上と中小企業支援の意味合いも加わり、さらに難解な制度になっています。
また大企業向けのペナルティもこれまでの税法の常識を超える制度で政府の3%賃上げへの強い意思が感じられます。
実際どれぐらい使えるかは詳細な条件が出てからになりますが、賃上げの起爆剤となるよう期待されます。