事業承継税制とは、中小企業の創業者が高齢化する中、スムーズに事業承継ができるように相続税や贈与税を軽減する制度で、正式には「非上場株式についての相続税(贈与税)の納税猶予の特例」と言います。
あくまで免除ではなく、商売を続けることを前提とする猶予なんですが、要件が厳しいため、認定数は全国で年間500件に満たず、十分に活用されているとは言えません。
そこで使いやすいように要件が少しずつ緩和されており、今回の改正でも次のような点が変わります(H29.1.1以後の相続・贈与から)。
1.精算課税贈与も対象に
<従来>
贈与税の納税猶予を受けたあとで何らかの事情で要件を満たさなくなると認定が取り消され、多額の贈与税を払わななければなりませんでした。
1億円の株なら贈与税は約4800万円になります。
<改正>
認定の取り消しがあった場合に相続時精算課税が使えるようになりました。
1億円の株なら贈与税は1500万円に軽減され、さらに相続時に精算されるので納税猶予を始めからしなかった場合と同程度の税額で済むようになります。
2.雇用確保要件の緩和
<従来>
8割の雇用を確保することも猶予の条件の1つですが、従来の計算では1人未満の端数は切り上げでした。
すると4人以下の会社では1人減ると必ず要件を満たさないことになります。
4人×80%=3.2人 ∴4人
<改正>
端数を切り捨てに変更し、4人以下の会社で1人減るだけなら8割の雇用確保要件を満たすこととなりました。
4人×80%=3.2人 ∴3人
3.災害や取引先倒産のケースの救済
<従来>
災害や取引先の倒産が理由であっても8割の雇用確保ができなければ認定が取り消され、多額の贈与税が発生していました。
<改正>
被害に応じて雇用確保条件が免除又は緩和されます。
細かい改正ですが、導入の障害になっている項目を1つずつ取り除いていっている感じです。
要件にハマれば効果は大きいので計画的に事業承継を考える際には”事業承継税制”の活用も検討していきましょう。