土日をまたぎましたが、関西独特の不動産慣習の続きです。
3.敷引き
<概要>
賃貸契約をする際には借主から貸主へお金を預けます。
退去時の修繕や滞納時の立て替えに充てるのがその目的ですが、全国と関西では呼び方が異なり、支払い方や税務にも違いがあります。
<違い>
・全国:預けるのが「敷金」、退去時に返還されないのが「礼金」
・関西:預けるのが「保証金」、退去時に返還されないのが「敷引き」
意味としては「敷金=保証金」、「礼金=敷引き」です。
ただし「礼金」「敷引き」の支払い方は契約にも寄りますが違いが大きいです。
「礼金」は当初契約時に支払いますが、2年ないし3年の契約更新ごとに「礼金」または「更新料」として通常家賃の1か月分を支払います。
これに対して「敷引き」は契約更新時には支払いはありません。
「敷引き」は保証金の〇%を退去時に差し引く、あるいは契約の継続期間に応じて返還しない割合を定めています。
<税務>
「敷金」「保証金」の名称を問わず、返還される部分の処理は同じです(貸借対照表の投資その他の資産)。
返還されない「礼金」「敷引き」部分は契約書をしっかり確認して処理する必要があり、貸主借主ごとに次にようになります。
≪貸主≫
・礼金
貸した時点での売上
・敷引き
貸した時点で返還しないことが確定している部分が売上。「3年以内なら50%、10年入居すれば全額返金」と書いてある場合、全額返還する可能性もあるため貸した時点で売上になる部分はありません。
≪借主≫
・礼金
借りた時点で繰延資産計上して契約期間で償却。ただし20万円未満であればすぐに経費になります。
・敷引き
借りた時点で返還されないことが確定している部分を繰延資産計上して通常5年で償却。繰延資産は効果が及ぶ期間で償却しますが、更新料がない場合、敷引きの効果が契約期間中ずっと続くことになります。期間が明確でない敷引きのような繰延資産は税務上5年で償却します。なお20万円未満ですぐ経費になるのは同じです。
シンプルな「敷金」「礼金」に比べると「保証金」「敷引き」はちょっと複雑ですが、契約書特に特記事項のところも確認して正しく処理しましょう。
ちなみに「礼金」「敷引き」に関して、京都はなぜか全国寄りの不動産慣習になっています。京都の人に言わせると全国が京都寄りなのかも知れませんが…。