前回の続きで関西独特の不動産取引の慣習について見ていきます。
2.持回り保証金
<概要>
土地や建物を借りるときは通常借主から貸主へ保証金を差し入れます。
解約した場合には逆方向で貸主から借主へ返還されます。
貸主が売買した場合も賃貸契約が終了するので解約と同じはずですが、売買の場合の保証金の取扱いに差があって税務にも影響します。
<違い>
全国:借主は旧所有者と保証金を精算後、新所有者(貸主)に保証金差し入れ
関西:保証金分のお金は動かさず、新所有者(貸主)に債務として引き継ぎ
<税務>
契約書上の売買価格に差が出るので注意が必要です。
≪例≫ 建物を1億円で売却。テナントからの預かり保証金2000万円あり
・全国
2000万円を一旦精算。1億円で売買契約。新所有者の取得価額は1億円。その後テナントから改めて2000万円差し入れ。
・関西
8000万円で売買契約。新所有者は将来テナントが退去する際に返還すべき2000万円の保証金債務を引き継ぎ。新所有者の取得価額は契約書上の見た目の売買価格8000万円+預かり保証金2000万円で1億円。
同じ価値のものを売っているので会計上も税務上も結論は同じです。
ただし関西方式だけ見ていると8000万円で売買したように見えてしまいます。
旧所有者の譲渡所得の計算では契約書記載の8000万円に保証金2000万円を上乗せします。
新所有者の取得の処理は(建物)(預かり保証金)という仕訳を入れて、取得価額に上乗せします。
なお土地建物を同時に売買した場合は、建物だけに取得価額を上乗せします。
あくまで保証金は建物賃貸契約の中の話であるためです。
保証金については礼金と敷引きに関する話もあるのですが、長くなるので次回へ続きます。