昨日の続きで合併をした場合の繰越欠損金について見ていきます。
よく問題になるのは、赤字会社を合併して繰越欠損金を取り込むケースです。
繰越欠損金ありきの合併を防ぐために、引き継げるかどうかに関してルールが定められています。
通常は合併により会社が消滅した場合は、その会社が持っていた繰越欠損金も消滅するので使うことはできません。
ただし、適格合併であれば、繰越欠損金を引き継いで使うことができます。
適格合併とはグループ内の組織再編など、効率的な運営をするための合併で、大きく見れば経済的実態が変わらない場合に税金が優遇されるというものです。
繰越欠損金による租税回避が目的ではなく、グループ最適化のための組み換えである適格合併であれば繰越欠損金も引き続き使うことができます。
適格合併となるためには次のような要件があります。
① 金銭等不交付:合併対価は株のみで金銭等が交付されない
② 支配関係継続:合併前からの支配関係が合併後も継続
③ 従業者引継 :消滅会社の従業員の概ね8割以上を引き継ぎ
④ 事業継続 :消滅会社の主要事業が合併後も継続見込み
⑤ 事業関連性 :両社の主要事業が相互に関連
⑥ 事業規模 :両社の売上、従業員数、資本金のいずれかの差が5倍以内
⑦ 経営参画 :両社の役員のそれぞれ1名以上が合併後も役員
要件は多いですが、合併の態様によって要件の数は変わります。
例えば100%子会社の合併であれば、①と②だけでOKです。
ただし、適格合併であればすべての繰越欠損金を使えるわけではなく、一部制限されることがあります。
企業グループ内の合併である場合、5年前(又は設立日のいずれか遅い日)から支配関係があれば、繰越欠損金目的とは見られず全て使うことができます。
また5年以内であっても「みなし共同事業要件」を満たしていれば繰越欠損金の利用に制限はありません。
「みなし共同事業要件」とは近い業種の対等合併による組織再編を促すもので次のような要件があります。
① 事業関連性 :両社の主要事業が相互に関連
② 事業規模 :両社の売上、従業員数、資本金のいずれの差が5倍以内
③ 事業規模継続:事業が継続し、支配後の規模に2倍超の変動がない
④ 経営参画 :両社の役員のそれぞれ1名以上が合併後も役員
これらの要件をクリアしない場合には繰越欠損金のうち、買収以後の期間分は使えますが、それ以前のものは使えません。
ちょっとややこしいですが分かりやすいダメパターンとしては
・業種も規模も違う会社を買収して役員を追い出す
・買収後すぐに合併
ということになります。当然と言えば当然かも知れません。
繰越欠損金目的で合併するわけではないと思いますが、使えるものは使った方が事業にはプラスですので、合併の際には要件を丁寧に確認するようにしましょう。