前回の「税務調査の再開」の記事でも触れましたが、コロナ下における税務調査は案件を厳選して行われそうです。
ではどんな会社が税務調査の対象に選ばれやすいのでしょうか。
通常時に税務調査に来やすい会社の特徴をピックアップしてみて、より多くの条件を満たす会社がコロナ下においても税務調査が来やすい会社と言えます。
<前提条件>
① 調査期間が3年以上ある
通常3年分は調べるので設立直後はあまり来ません。
少なくとも3年たまってから調べにきます。
以前調査があった会社に関しても、よほどのことがない限り3年は空きます。
平成23年12月に更正期間(調査でさかのぼれる期間)が5年に延びてからは5年以上空くケースが増えました。
10年以上税務調査がない会社も定期的な監査のような感じで調査対象になることがあります。
特に問題がなく、たまには見ておこうという観点なので、新人が来たり、異動前の数合わせで来ることもあります。
ただしコロナ下の現状では緊急性が低い部類に入ります。
② 黒字
調査に来る法人のうち赤字の会社は1割程度です。
赤字だと多少の修正があっても税金が発生しませんので、税務署としても労多くして”売上”ゼロになってしまいます。
ただ赤字なら絶対来ないわけではありません。
赤字でも消費税や源泉所得税に誤りがあれば税額は発生しますし、作為的な赤字と疑われると調査で確認されます。
黒字の中でも、利益の大きい会社や繰越欠損金を消化した直後の会社はより可能性が高いと言えます。
③ 還付申告と更正の請求
税務署は一旦受け取った税金を返すのが大嫌いでず。
それだけに税金の還付を受けるための申告は原則的に調査対象になります。
例えば消費税の還付申告、法人税の繰り戻し還付(前年黒字・今年赤字で前年分還付)、更正の請求(期限内申告後、還付のためだけに再度申告)は調査が来る前提で備えておいた方がいいでしょう。
この部分はコロナ下においてもあまり変わりません。
④ 前回調査の実績
税務署は癒着を防ぐ観点から定期的に異動のある組織なので、同じ人が2度調査に来ることはありません。
それだけに引継ぎ書類はしっかり作られていて、前回調査の内容は事細かに報告書が作られています。
前回調査が「修正なし、軽微な修正、単純ミス」などであれば次の調査の確率は下がりますが、前回調査に「脱税、重加算、多額の修正」などがあれば、その後の是正状況を確認する意味でも定期的に調査が来ます。
⑤ 地域的な特徴
税務署も所轄によって得意不得意があります。
同じ業種が集積している地域であれば、調べる側も業種の特徴を理解している分調査の効率が良く、不正発見のノウハウもたまっています。
効率性の観点、業種ごとの処理の統一性の観点からも特定の業種が集積している地域ではその業種を営む会社への調査が比較的来やすいと言えます。
また規模で考えると、大規模な会社が本店を構える都市部においては、規模の小さい会社の優先順位は下がる傾向があります。
逆に中規模の会社でも地方に行けば、相対的に大規模になり、調査対象になりやすいと言えます。
ここまで見てきたのは前提条件としての一般的な傾向が中心です。
実際の調査先の選定においては会社ごとの特徴がより重要なので、そのあたりは次回へ続きます。