前回の続きで年末調整の電子化について取り上げます。
手続きや準備については、会社がやることと従業員がやることとがありますが、まず会社がやることを見ていきます。
会社が準備としてやることは大きく分けて2つあり、環境整備(システム改修、届出)と従業員への周知です。
1.環境整備
① 電子化のレベル
年末調整の電子化にはどの程度徹底するかで4つのレベルがあり、レベル4が最も効率面で電子化メリットがあります。
<レベル1>
控除証明書を従業員が紙で入手し、年調ソフトに入力し、申告書と証明書
を紙で会社へ提出
<レベル2>
控除証明書を従業員がデータで入手し、年調ソフトに入力し、申告書と証明書を紙で会社へ提出(証明書はQRコードに変換)
<レベル3>
控除証明書を従業員が紙で入手し、年調ソフトに入力し、申告書はデータで証明書を紙で会社へ提出
<レベル4>
控除証明書を従業員がデータで入手し、年調ソフトに入力し、申告書と証明書をデータで会社へ提出
② システム改修
現状でどの程度電子化できているか、今後どこまで電子化するかで改修内容が変わります。
<A すでに書類を電子的に回収している>
・マイナポータル連携
・保険料控除、住宅ローン控除の自動計算
<B 基本情報を申告書に印字していて、今後は従業員が申告書作成>
・従業員入力用の画面追加
・マイナポータル連携
・保険料控除、住宅ローン控除の自動計算
・従業員作成の申告書をチェック
<C 基本情報を申告書に印字していて、今後は従業員は情報収集のみ>
・従業員が「年調ソフト」で作成したデータの取り込みと自動計算
・団体保険の情報取り込み
<D 従来は紙を配布するのみで、今後は従業員は情報収集のみ>
・従業員が「年調ソフト」で作成したデータの取り込みと自動計算
ちょっと違いが分かりにくいですが、ABは自社のシステムに従業員さんがメインで入力し、CDは年調ソフトによる情報収集と送信が主な機能になります。
国税庁提供の年調ソフトと給与ソフトの連携については、市販ソフトであれば通常はアップデートされるはずです。
従来は紙のみでやっていた会社が多いと思いますので、現実的かつ効率的なパターンとしては、無償の年調ソフト(マイナポータルには当然対応)を使って従業員さんに入力してもらい、弥生給与など市販ソフト側でそれを受け入れるアップデートができていれば電子化できます(Dパターン)。
③ 税務署への届出
年末調整を電子化するには、事前に税務署の承認を受ける必要があります。
「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出して、問題なければ翌月末に自動承認となります。
11月にデータ収集するとなると、9月に申請書を提出して、10月末に自動承認されれば間に合います。
2.従業員への周知
今回の年末調整の電子化の特徴は、従業員さんに「情報収集~データ取り込み~会社へ送信」までしてもらうことにあります。
情報収集の仕方は① 電子化のレベル によって変わってくるので、それに応じてやり方を周知してもらう必要があります。
そのあたりの詳細は次回の「従業員準備編」で見ていきます。