昨日は実際に払わないと経費にならないものを取り上げましたが、今回はその逆でたとえ払っても経費にならないものを見ていきます。
こちらにも「債務確定基準」が関係してきます。
① 相手との合意で債務が成立、② 原因となる事実が発生済み、③ 期末までに金額を合理的に算定できる、とう要件のうち、②が重要になってきます。
<サービスの提供がまだのもの>
・旅費
慰安旅行や海外出張費などは出発より前に払う部分が多いですが、いつ行ったかがポイントです。
税務調査では、決算間近のこれらの支出に関して日程を確認して今期の経費になるかどうかを判断します。
・広告費
CMや雑誌などの商品広告、求人募集費など請求書に基づいて支払ったとしても、何らかの媒体に出ていないとサービスの提供が完了したとは言えません。
掲載日がいつからかということがポイントになります。
<在庫になるもの>
・商品
納品があって支払が終わっていても、販売していない場合は在庫として計上されるので今期の原価にはなりません。
これは「債務確定基準」ではなく、「費用収益対応の原則」に基づくもので、売上げがあった年度に原価として経費になります。
・貯蔵品
印紙や切手、電子マネーのチャージなど決算間近にまとめ買いしたとしても使っていなければ経費にはなりません。
期中は使用量をずっと追跡せずに買った時の経費にしていても問題ありませんが、決算では残っている分をチェックして「貯蔵品」として在庫計上します。
なお、商品仕入れも貯蔵品も消費税に関しては買った年度で控除することができるので消費税対策にはなります。
<いつ払っても経費にならないもの>
・税金関連
儲けをベースに課税される法人税、所得税、住民税などはいつ払っても経費になりません。これが経費になると永久に利益が計算できないことになります。
また延滞税や加算税なども罰則的な意味合いから経費になりません。
例外として事業税は払った年度の経費になります。
・借入元本
借入金の利息は経費になりますが、元本部分は借りたものを返しているだけなので経費になりません。
言われると当たり前のことですが、借入返済は事業計画の重要な部分を占めることから経費と勘違いされることもあります。
元本返済部分は経費にならないことから、損益計算書上は利益が出ていてもお金はない、ということが起こります。
税引き後の利益から元本返済を行うことを考えると、単純に言うと毎月の元本返済額の倍の利益を叩き出す必要があります。
経費になるかどうかは税務調査との関連もありますが、資金繰りという点でも重要なポイントになってきますので、注意して見るようにしましょう。