税制改正大綱10回目は納税環境整備について取り上げます。
(1)消費税の申告期限の延長
<概要>
法人税や消費税の申告期限は原則、決算日から2か月以内ですが、法人税や法人地方税については1か月延長する特例があり、株主総会が約3か月後にある上場企業などで採用されています。
しかし消費税については延長制度がなかったため、2か月以内に仮で申告した上で修正申告するという二度手間が行われていました。
そこで消費税についても法人税等と合わせて申告できるよう延長制度が導入されます。
なお延長した1か月間については利子税が発生するので、税負担の見地からこれまで通り、2か月の時点で見込納付する会社が多いと考えられます。
<適用時期>
・令和3年3月31日以後に終了する課税期間から
(2)利子税・還付加算金の割合引下げ
<概要>
納期限を延長した場合に支払う利子税及び還付される場合に受け取る還付加算金の割合は令和元年で1.6%ですが、市場金利と比べて高すぎるため、1.1%に引き下げられます。
1.6%の利息が付くなら多めに払っておこう、というケースもありましたがそのうまみは減少します。
正確には財務大臣が毎年12月に公表する銀行の平均短期貸出金利に加算する割合が1.0%から0.5%に引き下げられます。
<適用時期>
・令和3年1月1日以後の期間から
(3)電子帳簿等保存制度の緩和
<概要>
領収書等を電子帳簿で保存するには、①受け取った側でタイムスタンプ付与、②事務処理規定での運用という2つの方法がありましたが、導入しやすいよう新たな方法が追加されます。
③発行会社がタイムスタンプを付与していれば受け取り側では不要、④クラウド会計など受け取り側でデータ改変できないシステムでの保存、の2つが可能となるため、タイムスタンプのシステムを導入しなくても電子帳簿保存がしやすくなります。
<適用時期>
・令和2年10月1日から
(4)確定申告の添付書類
<概要>
・医療費控除については領収書をつけずに健康保険組合からの通知書を使う場合は書類添付が条件でしたが、電子申告の際に内容を入力すれば添付が不要になります。
・ふるさと納税をした場合には各自治体の証明書をつける(電子なら入力する)必要がありましたが、仲介サイトがとりまとめた証明書でよくなります。
<適用時期>
・令和3年分の確定申告から
(5)準確定申告の電子化
<概要>
亡くなった場合の所得税の申告である準確定申告は電子申告ができませんでしたが可能になります。
電子署名については全員でなく代表者のみでOKで、他の相続人については確認書で対応することになります。
<適用時期>
・令和2年分の準確定申告から
(6)納税地の異動があった場合の振替納税の継続
<概要>
納税地を異動した場合、振替納税が一旦リセットされてしまうため、手続きができておらず振替できないケースがあったため、原則的に継続できるように変更されます。
<適用時期>
・令和3年1月1日以後の異動届から
納税環境整備については細々としたものが多いですが、実務上「イケてないな」と思っていた部分が改善されているので納税者、税理士、税務署それぞれにメリットがありそうです。
税制改正大綱の解説はキリよく今日で完結したかったのですが、項目が多く書き切れなかったので来年に持ち越します。
今年もブログ記事を読んでいただき、ありがとうございました。
なお事務所は明日28日から1月5日まで年末年始休暇とさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、宜しくお願い申し上げます。
みなさまよいお年を。