自筆証書遺言は保管方法が自由なため、大切に保管した遺言書を相続人が発 見できなかったり、遺言者自身が紛失してしまったりと保管上の問題がありました。
そこで自筆証書遺言を法務局で保管する制度が創設され、自筆証書遺言を作成した方は法務局に遺言書の保管を申請することができるようになりました(令和2年7月10日施行)。
<特徴>
1.遺言書の保管の申請
・保管の申請の対象となるのは、民法第968条の自筆証書による遺言書のみです。この自筆証書遺言は従来は全文自筆で書く必要がありましたが、今年の1月13日から財産目録については、全ページ署名押印することを条件に、パソコンで作ったり、謄本や通帳のコピーによる添付がOKになりました。
・遺言書の保管の申請は、遺言者が法務局(遺言書保管所)に自ら出向いて行わなければなりません。
2.遺言者による遺言書の閲覧、保管の申請の撤回
・遺言者は、保管されている遺言書について、その閲覧を請求することができ、また遺言書の保管の申請を撤回することができます。
・遺言者の生存中、遺言者以外の方は遺言書の閲覧等を行うことはできません。
3.遺言書の保管の有無の照会及び相続人等による証明書の請求等
・遺言者が亡くなった後、相続人や受遺者らは全国にある法務局において、遺言書が保管されているかどうか調べること(遺言書保管事実証明書の交付請求)、遺言書の写し(遺言書情報証明書)の交付請求ができ、また、原本保管している法務局において遺言書の閲覧ができます。
・遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付があると、法務局の遺言書保管官は、他の相続人等へ遺言書を保管している旨を通知します。
4.遺言書の検認の適用除外
・遺言書保管所に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認が不要となります。つまり相続後、すぐに名義変更などの手続きを行うことができます。
<注意点>
今回の制度は、自筆証書遺言と公正証書遺言の”いいとこ取り”をしたようなところはありますが、注意点もあります。
保管する際に法務局は形式的にチェックはしてくれますが、内容の有効性まで見てくれるわけではなく、従来通り自己責任となります。
また、保管してあっても、相続人が検索しない限り見つからないので、保管制度を利用する場合は相続人にその旨を伝えておいた方がいいでしょう。
注意点はあるものの、公正証書遺言に比べると、手続面、費用面でハードルはかなり下がるので、来年の施行以後、利用は増えていきそうです。