年配の方からよく受ける質問として、
「そんなんもろたら年金減らされるよね?」
というものがあります。
ただし勘違いであることが多く、実際には年金が減る事例は限られます。
① 不動産収入がある。
② 息子の設立した会社で役員報酬をもらっている。
③ 嘱託で週3回勤務している。
④ シルバー人材センターでの収入がある。
⑤ 自宅を売却した。
⑥ 自宅の半分を贈与でもらった。
これらはいずれももらう年金には影響がありません。
なお、②③については勤務先で社会保険に加入していないことが前提です。
①④⑤についても所得には変わりないので国民健康保険に影響することがありますが、もらう年金には影響がありません。
⑥はそもそも税金の種類が違うので、年金にも健康保険にも影響はありません。
もう1つの誤解は年金は丸々減るものではなく、バリバリ働いていてももらえる部分はある、という点です。
年金には大きく分けて『基礎年金』と『厚生年金』とがありますが、働くことで減るのは『厚生年金』のみで『基礎年金』には影響はありません。
働くと年金が減る仕組みを「在職老齢年金制度」と言いますが、改めて要件を確認します。
・老齢厚生年金の受給資格がある。
・勤務先で厚生年金に加入している。
・老齢基礎年金は減らない。
減額幅はもらう年金ともらう給料の合計で判定するのですが、年齢によっても違いがあります。
【65歳未満】
もらう年金(※1)+もらう給料(※2)が28万円以下であれば年金は全額もらえます。
28万円以上になると段階的に減っていきますが、例えば厚生年金が10万円の場合、給料が29万円以上あれば、厚生年金は0になります。
【65歳以上】
もらう年金+もらう給料が47万円以下であれば年金は全額もらえます。
47万円以上になると超える部分の半分が支給停止されます。
したがって0になることはありません。
※1 もらう年金(基本月額)
加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額。
※2 もらう給料(総報酬月額相当額)
(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12
現行制度では働いていても社会保険にさえ入らなければ、いくら他で収入があっても年金は減ることはありません。
となると社会保険に入らなくていい程度、例えば週20時間未満とか正社員の3/4未満に抑えて働こう、という発想になります。
このことが高齢者の就労意欲を削いでいる面もあるので、今後、廃止も含めて骨太の方針の中で議論されるようです。