保険と節税の最終回は「評価の圧縮」です。
保険事故(死亡や満期など)が起こった場合は、保険金額に対して相続税や所得税がかかりますが、まだ何も起こってない保険にはどう税金がかかるのでしょうか。
保険事故未発生の保険について権利の移動があれば、その時点で一旦解約したものと仮定して、解約返戻金相当額に対して、相続税や所得税がかかります。
例えば契約者を変更すれば、解約返戻金等を受け取る権利が移動しますし、契約者が亡くなった場合には相続人が保険にまつわる権利を引き継ぐことになります。
これがどう節税につながるのか例で見ていきます。
<例1>
・契約者:会社→役員へ変更
・受取人:会社→役員へ変更
・被保険者:役員
・種類等:低解約返戻金付逓増定期、医療など
≪仕組み≫
保険料を会社が負担し、解約返戻金が低いうちに社長個人に名義変更。
名義変更の際は、社長が権利を買い取る場合のほか、退職時に実行して退職金による低い税率と併用することが多い。
≪注意点≫
当初の解約返戻率が極端に低い商品の場合、税務リスクが高いです。
会社としては高い保険料を払った保険をみすみす損してまで名義変更する経済合理性がないためです。
<例2>
・契約者:会社
・受取人:会社
・被保険者:役員
・種類等:長期平準定期、逓増定期、養老、医療など
≪仕組み≫
例1と似ていますが、会社の株評価を下げるために低い解約返戻金を使う方法です。
まず保険料を払った年は利益が減るので株の評価額が下がります。
そして解約返戻率が低い間に株式の贈与を行なえば、株価を下げた状態で株式が移転できます。
相続はいつ起こるか分かりませんが、贈与であれば時期を決めることができます。
≪注意点≫
全額損金になる保険自体が今販売自粛していることが多く、使える保険は限られそうです。
また例1とも共通しますが、解約返戻率が低いということはその時期に実際に解約すると損をします。
余裕資金で行なわないと本当に損することになりかねないので注意しましょう。
保険による節税にはさまざな手法がありますが、度を過ぎると税務署に指摘されるだけでなく、結果的に損していることもあるので、まず保険機能ありきで考え、節税はバランスよく行ないましょう。