節税の方法の1つとして保険が検討されることは多いんですが、そもそも保険は節税になるんでしょうか。
例えば話題になった中小企業経営者向けの全額損金の定期保険で見ていきます。
① 利益が1000万円出ているけれどもなるべく税金は払いたくない。
② 決算間際に保険料を1000万円支払って加入。全額経費になるので利益は0で法人税も0。
③ 毎年続けて、解約返戻金がピーク(80%)となる5年後に解約。
④ 解約返戻金5000万円✕80%=4000万円は雑収入処理。
保険料を払った年度は1000万円✕35%=350万円相当の税金が浮きますが、5年後に4000万円✕35%=1400万円の法人税がかかってきます。
解約のタイミングで役員退職金や大規模修繕など経費になるものがあればいいですが、なければ結局は課税されるということになります。
その意味では”節税”というより”課税の繰り延べ”ということになります。
この方式にはメリットとデメリットがあります。
<メリット>
・目の前で払う税金が減る。
・将来の使途が明確であれば余裕のある時に社外に資金をプールできる。
・手許にお金があるとついつい使ってしまう人には有効。
<デメリット>
・保険料支払時のキャッシュアウトは利益に税金を払うより大きい(利益に税金を払うと税引後の65%は残りますが、保険料として支払うと一旦100%お金は出ていく)。
・解約返戻率が高いとは言え、20%(この例では1000万円)目減りする。
デメリットとも関係ありますが、保険の設計書には「実質返戻率」という項目があります。
解約返戻率はピークで80%ですが、経費になることで法人税が浮くので実質では100%を超えて”得”します、というものです。
死亡保険金などの保険機能が付いてきた上にさらに得するなんてことはあるんでしょうか。
① 法人税効果 5000万円✕35%=1750万円
② 解約返戻金 5000万円✕80%=4000万円
③ 実質返戻率 (4000+1750)÷5000=115%
設計書に書いているのはここまでですが、次の項目が考慮されていません。
④ 返戻金への課税 4000万円✕35%=1400万円
⑤ 解約による目減 5000万円-4000万円=1000万円
保険会社も損するわけにいかないので当然と言えば当然ですが、保険に入って完全に得するということはありません。
とは言え、先に述べたメリットもあることから、ニーズに合わせて活用すれば保険は経営上有効なツールですし、節税も可能です。
節税につながる使い方は次回以降見ていきます。